会長挨拶
日本音声学会第16代会長
上田 功(Isao UEDA)
この度、理事の互選により日本音声学会の第16代会長を拝命いたしました。本学会は、創立100年に垂んとする、言語系では最も長い歴史を誇る学会ですが、この機会に、あらためて、創立90周年記念のUSBに収録された、『音声学会会報』等に目を通しました。すると、学会創設当初は、現在も続いている方言音声の記述などに加えて、会員が耳にした言い間違いや、語の発音の新しい変異形の報告など、広く身近の音声が興味の対象になっておりました。そして、この半世紀は、科学の一分野としての客観性、厳密性をもった論考が増加し、学問の追究の場としての本学会の発展がよくわかりました。それと同時に、学会の運営に関しても、当初は特定の個人に頼っていた学会運営が、評議員、理事や各種委員会などが、特にこの30年の間に整ってきて、組織としての体制が形をなしてきました。これまで山も谷もありましたが、全体的には、健全な発展をとげてきたことがわかりました。
実は今回の会長指名にあたっては、お受けするかどうか迷いました。と申しますのも、歴代の会長は、我が国の音声学・言語学のパイオニアである創設期の会長から前会長まで、いわば、音声学研究の王道を歩んでこられた方々です。私のように隣接分野との狭間で、細々と研究を続けてきた者がはたして適任かどうか悩みました。しかしながら、そのような者が指名されると言うことは、学会が多様性を認め、発展したひとつの証であると考えてお引き受けした次第です。幸いにも、各委員会の委員長は、これまで音声学の各領域で活躍してこられ、また理事として、積極的に運営に係わっていただける方ばかりです。私といたしましては、各委員会にできるだけ自律性をもたせて、手腕を振っていただこうと考えています。
前執行部は、前川会長の英断により、会費の値上げをおこないました。これは会員の皆様にご負担をおかけする苦渋の決断でしたが、これにより危機的であった財政状況は何とか持ち直しました。しかし依然として会員数の減少は続いており、これは財政に影響するだけではなく、学会そのものの弱体化に繋がりかねません。本執行部でも、この問題を継続的に議論し、少しでも会員減に歯止めを掛けたいと思います。また学会は研究成果を発表し、議論を交わすだけではなく、広い意味で、会員の「勉強」の場でもあります。今後、音声学の周辺領域や隣接分野との交流を深め、大会や研究会の講演やシンポジウムで、またセミナーや入門講座の形で、幅広く音声言語について知識を深めていただきたいと考えています。またこれが学会の社会貢献に繋がると信じております。
時の流れにつれて、学問としての音声学自体が形を変えていき、学会の運営も、それに応じた対応が求められます。これからの3年間、微力ではありますが、学会のために尽力したいと考えております。会員の皆様には、ご協力をたまわりますよう、お願い申し上げます。
上田 功(Isao UEDA)
この度、理事の互選により日本音声学会の第16代会長を拝命いたしました。本学会は、創立100年に垂んとする、言語系では最も長い歴史を誇る学会ですが、この機会に、あらためて、創立90周年記念のUSBに収録された、『音声学会会報』等に目を通しました。すると、学会創設当初は、現在も続いている方言音声の記述などに加えて、会員が耳にした言い間違いや、語の発音の新しい変異形の報告など、広く身近の音声が興味の対象になっておりました。そして、この半世紀は、科学の一分野としての客観性、厳密性をもった論考が増加し、学問の追究の場としての本学会の発展がよくわかりました。それと同時に、学会の運営に関しても、当初は特定の個人に頼っていた学会運営が、評議員、理事や各種委員会などが、特にこの30年の間に整ってきて、組織としての体制が形をなしてきました。これまで山も谷もありましたが、全体的には、健全な発展をとげてきたことがわかりました。
実は今回の会長指名にあたっては、お受けするかどうか迷いました。と申しますのも、歴代の会長は、我が国の音声学・言語学のパイオニアである創設期の会長から前会長まで、いわば、音声学研究の王道を歩んでこられた方々です。私のように隣接分野との狭間で、細々と研究を続けてきた者がはたして適任かどうか悩みました。しかしながら、そのような者が指名されると言うことは、学会が多様性を認め、発展したひとつの証であると考えてお引き受けした次第です。幸いにも、各委員会の委員長は、これまで音声学の各領域で活躍してこられ、また理事として、積極的に運営に係わっていただける方ばかりです。私といたしましては、各委員会にできるだけ自律性をもたせて、手腕を振っていただこうと考えています。
前執行部は、前川会長の英断により、会費の値上げをおこないました。これは会員の皆様にご負担をおかけする苦渋の決断でしたが、これにより危機的であった財政状況は何とか持ち直しました。しかし依然として会員数の減少は続いており、これは財政に影響するだけではなく、学会そのものの弱体化に繋がりかねません。本執行部でも、この問題を継続的に議論し、少しでも会員減に歯止めを掛けたいと思います。また学会は研究成果を発表し、議論を交わすだけではなく、広い意味で、会員の「勉強」の場でもあります。今後、音声学の周辺領域や隣接分野との交流を深め、大会や研究会の講演やシンポジウムで、またセミナーや入門講座の形で、幅広く音声言語について知識を深めていただきたいと考えています。またこれが学会の社会貢献に繋がると信じております。
時の流れにつれて、学問としての音声学自体が形を変えていき、学会の運営も、それに応じた対応が求められます。これからの3年間、微力ではありますが、学会のために尽力したいと考えております。会員の皆様には、ご協力をたまわりますよう、お願い申し上げます。